3.代表質問 第3期松原市政を問う

平成17年6月議会
 

ポスト万博

5点目は、ポスト万博についてです。「愛・地球博」の開幕から3カ月、開催期間の半分が過ぎました。連日入場者も盛況で、先日、目標の1500万人の半数を大きく上回る900万人を突破しました。また、つい先ごろBIEによって「愛・地球博」は成功しているとの決議がなされました。万博の母都市・名古屋にとって最も大切なことは、この万博の勢いを大切にするとともに、万博によって発掘された都市魅力や培われたホスピタリティーを、将来にわたって生かしていくことです。そこで、この時期に市長の感想も含め、ポスト万博の基本的な考え方についてお聞きします。

◎市長  ポスト万博の基本的な考え方、そして「愛・地球博」に対する私の感想、基本的な認識等お尋ねをいただきました。

この「愛・地球博」は、120を超える国や国際機関が出展、参加しております。こうした世界じゅうの人々と触れ合うことによりまして、多様な文化や伝統を肌で感じることができる絶好の機会となっております。私も時々会場へ参ります。名古屋の子供たちが遠足あるいは校外学習の形で来ておる姿を見ておりますが、本当に子供たちは生き生きと、事前の準備もしながら活動している姿が見れて、好ましいものと思っております。

そのほか、この博覧会を契機にいろいろな事業を市内で行ったわけでございます。ささしまサテライト会場やオアシス21での名古屋パワーの発信も、市民や企業の皆様による1,600を超える参加グループの方々に御参加いただきまして、大変な盛況になっております。こうした取り組みによりまして、市民の皆さんと一緒になって名古屋の魅力や個性を、世界中の人々に発信する機会を得たことは大変よかったと思っております。

次の基本的な認識ということで、博覧会をどう生かすかということですが、次のステップとしては、環境については、市民のライフスタイルを変えていくなど環境首都を目指す取り組み、持続的発展が可能なまち、こういったことを目指してまいりたい、それへの取り組みを一層強めてまいりたいと思っています。また、大交流時代にふさわしいまちを目指しまして、武家文化、あるいは物づくり文化などに代表される名古屋の個性と魅力を、さらに力強く発信してまいりたいと思っております。
 

観光資源の活用と誘客施策

次に、観光資源の活用と誘客施策について、ポスト万博の核の一つになり得るとの観点からお尋ねいたします。

名古屋は産業都市としてのイメージが強く、観光の分野ではマイナーであるとの固定的観念が長らくありましたが、万博効果もあり、観光スポットや名古屋グルメなどが全国ネットで放映されたり、新聞、雑誌の記事になったりいたしております。そうした中で、物づくりのまちとして産業観光を初め近世武家文化、都市観光など名古屋の都市イメージが徐々に向上しており、大変喜ばしいことであります。

また、イメージだけでなく実際の数字でも効果がございます。最近の報道によれば、5月の市内主要16ホテルの客室稼働率は対前年比15.3%の増で、16ホテル中13ホテルが二けたの伸びを記録し、14ホテルが90%を超える稼働率を記録するなど、ほぼ満室状態であります。仮に会期185日間で市内の宿泊数が15%増加するとした場合、観光客宿泊客動向調査の結果をもとに試算いたしますと、市内の宿泊支出だけでもおよそ57億円も増加することになり、大変な経済効果ということができるわけであります。

宿泊だけではなく東海道新幹線の輸送量も、万博効果もあり、6月で対前年比10%増、名古屋と富山を結ぶ特急しらさぎも19%増と鉄道輸送も好調であることに加え、外食や土産品、観光施設への入場等、万博来場者によるさまざまな経済効果が生じており、産業全体でははかり知れない規模になっていることが想像されるわけであります。

しかし、万博後は当然落ち込みは予想されるわけであります。問題は、その落ち込みをいかに緩和するかであります。万博で名古屋へ来られた方々にまた名古屋に来てもらう誘客努力が必要であろうと思います。

そのためには、先ほど申しましたように、十分に魅力のある既存の観光資源を磨き上げ、すなわち名古屋の観光スポットの広報、宣伝、さらにはマスメディアの活用や旅行業者に協力を仰いでいくことも必要であろうと思います。また、その上に肝心なことは、名古屋に宿泊をしてもらう努力であります。市長の言う千客万来の都市実現に向け、名古屋の観光魅力のPRとあわせ、宿泊客確保のためにどのような施策を展開されるのか、市民経済局長に伺います。

◎市民経済局長 観光魅力のPRについて、議員御指摘のように、名古屋城、徳川園に代表されます名古屋ならではの既存の観光資源を磨き上げるとともに、マスメディアの活用など、観光PRの効果的な方策について検討してまいります。次に、宿泊客確保のための施策について、「愛・地球博」終了後も、観光バスの夜間駐車場は重要な課題であると認識いたしておりまして、その取り扱いにつきまして関係局と協議してまいります。
 

東山動植物園 再生プラン

次に、東山動植物園再生プランについてであります。

数ある魅力的な観光スポットの中でも、国内有数の動植物園である東山動植物園は、県内はもとより、東海3県を初め近隣県からも誘客が期待できる観光施設の一つです。しかし、最近では、独自の魅力創出に取り組む旭川市旭山動物園に、動物の展示数では歴然とした優位にあるにもかかわらず、入場者数で迫られているのが現状です。そこで、東山動植物園再生プランの基本的な考えを、その魅力アップの方策を含めお伺いをいたします。また、東山動植物園のある丘陵地一帯の自然環境と共生した整備をするのかどうか、さらには今後の検討について具体的にどのように進めていくのか。内部検討か、外部や地域の声は聞くのか、市長にお伺いをいたします。

◎市長  かつて東洋一の規模を誇ると言われた東山動植物園でございますが、平成3年までは300万人前後の来園者がございました。しかし、近年は200万人を割り込んでいるという現状でございます。しかしながら、この東山動植物園は全国でも有数の動植物の展示数と、都心にありながら広大な自然を有し、地下鉄や高速道路などのアクセスにも恵まれているという他に類を見ないよい条件を備えておりまして、これらを活用いたしまして動植物園の再生を図りたいというふうに思っています。

東山動植物園の面積は約60ヘクタールでございますけれども、なごや東山の森と言われる樹林に包まれまして、全体として約400ヘクタールもの良好な自然環境が、都市の貴重な財産として保全されております。これまでよりももっと市民が親しめる場所、自然と触れ合える場所とするためには、広大な森をさらに有効に生かすことが必要かというふうに思っています。また、環境首都の実現を目指す名古屋の動植物園でありますので、森の中で多くの人々が憩える空間をつくるとともに、動物の排泄、あるいは落ち葉の再利用などの物質の循環についても積極的に取り組んでまいりたいというふうに思っています。

これからの検討に当たりましては、さまざまな分野で活躍をしていただいております皆さん方に広範な議論をしていただきまして、次世代に贈る世界を代表する動植物園にしてまいりたいと考えております。
 

防災体制の充実

6点目に移ります。防災体制の充実についてであります。

初めに、地震対策における局間及び局・区役所間連携についてであります。

市民がお互いを助け合うためには、例えば自力では避難が困難である方の所在をあらかじめ把握しておき、だれがどのように責任を持って助けるかといったことについて、地域で事前の周知と了解が必要であります。しかし、個人情報保護の観点から、災害対策リストについて、平時は区役所で一元的に管理をし、地域の災害対策委員には渡されていないのが現状であります。リストは災害発生時に渡すとのことでありますが、発災直後の混乱時に果たして机上の計画どおりに事が進むかどうか、まことに心もとない話であります。

災害対策委員さんが災害対策リストを持っていないという事実は、恐らく多くの市民が御存じないことだと思います。現状、災害対策リストをどう渡すのかということについて、個人情報の保護と災害対応の両立という観点からの研究も行われてはおりません。むしろ今、本市では、災害対策リストを災害対策委員に単に渡すのではなく、地域が災害時に具体的な対応を想定しながら独自の名簿、すなわち、いざというときに機能する生きた名簿をつくってもらおうとの考えのもと、モデル学区を選定して実験しておられるとのことです。名簿作成の大前提は本人の同意であります。したがって、その作業にかかる労力たるや大変なものであることは想像にかたくないわけです。あえて困難な道を選択したということなのだろうと思いますが、困難であってもこれは市内全学区に拡大をしなければ意味がありません。

実際の作業には市としてもかかわっていかなければならないことから、局間、局・区役所間の連携も必要になってきます。東海地震を初め大規模地震はいつ起きても不思議ではないと言われている現状において、局間、局・区役所間連携をいかように進め、この問題に対処なさるのか、また、どう全市に広げていかれるのか、市長のお考えを伺いたいと思います。

◎市長 地震対策における局間及び局・区役所間の連携についてお尋ねをいただきました。地域における助け合いの仕組みづくりに当たりましては、本市では、昨年度末以降モデル地区を定めまして、本人の同意を得た方から、各世帯の希望する支援の内容を記載した防災対策名簿を作成しているところでございます。こういった名簿に基づきまして、だれがだれを助けるかといった具体的な支援体制を構築していくことが必要であるというふうに思っております。

今後は、モデル地区の取り組みから得た意見、要望や地域において名簿を作成していただいているなどの先進的な取り組みを紹介した事例集を作成いたしまして、関係局、区役所が連携を図りながら、地域における助け合いの仕組みづくりをしていくこと、これが大事になる。また、そのモデル例を全市に広がるように支援してまいりたいというふうに思っています。地域の防災訓練等を通じて助け合う仕組みの実効性を確保するよう努めてまいりたいと思っています。
 

河川激甚災害対策特別緊急事業 終了後の対応

次に、激特後の対応についてお尋ねいたします。治水対策であります。

あの東海豪雨からほぼ5年の歳月が流れました。その東海豪雨災害を受け、国、県により庄内川、新川、天白川を対象に進められてきました河川激甚災害対策特別緊急事業、いわゆる激特事業が完成しました。治水対策は、河川管理と内水対策を一体的に進めるべきであることは言うまでもありません。激特と歩調を合わせ本市が進めてきた緊急雨水整備事業も、おおむね予定どおりの進捗と伺っておりますが、激特完了後も治水事業に終わりはないと思います。激特後の河川整備について、国、県との連携も含め、どのように対応していくのか、その基本的な姿勢を緑政土木局長にお尋ねいたします。

また、市長は河川管理にも意欲を示しておられます。河川については、上流部の市町を流れ本市市内に至るものがほとんどであり、本市としては一体管理がままならないといったさまざまな課題があろうと思います。しかし同時に、河川整備や河川利用の要望があったとき、河川管理者にお願いをし、了解の後でないと事業の具体化が図れないなど、市にとって非常に歯がゆい状態でもあります。

まちづくりと一体となった河川利用や整備など、住民の声を反映していくためには、管理権限の移譲を受け、市が河川管理者として自主性を持つことも必要であると思います。平成12年の河川法改正により指定市が河川管理者になり得る道も開かれ、既に大阪市などでは権限移譲も受けております。今後どのような方針で臨まれるのか、市長に伺います。

◎緑政土木局長 防災体制の充実に関し、激特後の対応につきまして、

まず、庄内川についてですが、国土交通省は激特事業と並行して、洪水の流下に支障となっております国道1号線の一色大橋並びにJR東海道新幹線及び在来線の橋梁、道路橋である枇杷島橋を対象といたします枇杷島3橋のかけかえ事業を進めております。一色大橋につきましては平成20年度、枇杷島3橋につきましては平成26年度を目途に完了する予定と伺っておるところでございます。

一方、愛知県が管理します新川及び天白川につきましては、伏屋橋初め7橋のかけかえ事業を継続しております。これらの橋梁につきましても、おおむね順調に推移しておるということでございます。

さらに現在、国土交通省及び愛知県は、庄内川、新川及び天白川につきまして、今後20年から30年の期間における整備計画を作成しております。この計画は治水整備のみならず、水環境にも配慮した流域全体の将来像を明らかにする内容になると伺っております。本市といたしましては、このような計画設定に当たり、これまでと同様に河川整備促進期成同盟会の活動などの機会を通じて積極的に働きかけてまいりたいと考えております。

◎市長 防災体制の充実について、スーパー指定都市構想と河川管理についてお尋ねをいただきました。御指摘のように、既に大阪、横浜、札幌、静岡の4市がおのおのの市内を流れる河川の一部について権限移譲を受けておりまして、本市においても早急に対応を考えていくことが必要であると思っています。まずは、市域内で完結する堀川や山崎川の河川から権限移譲を進めていくことを考えております。しかし、その権限移譲を受けるに当たりましては、権限に見合う財源の確保が必要でございまして、今後県とも十分協議し、前向きに取り組んでまいりたいと思っております。
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