「安心・安全まちづくり条例案」あいまいな内容

平成16年9月議会

p-hatori-manga「安心・安全で快適なまちづくりなごや条例案」全体を精読いたしますと、この条例案が個別法に基づいて組み立てられたいわば個別授権に基づく委任条例ではなく、地方自治法に依拠し、包括的に保障された条例制定権を行使し、安心・安全で快適な名古屋を目指し、本市として自主的にルールを定めようとするものであることが読み取れます。

いわば、まちづくりの基本条例と位置づけることもできると思います。ただ、その一方で、それぞれの条文を詳細に見ていくと、道徳規範的なものや努力義務を課したものなどが多々見受けられ、条例としてその具体的な展開をなかなか想起しにくい部分があることも事実です。そうした中で、内容と照らして、そもそも条例の名称自体が広い意味を含み過ぎているのではないかとも感じております。
 

既存条例では「罰金」なのに、今回の条例案では「過料」

しかし、中には第12条のように、路上禁煙地区内の道路上で喫煙をした者に対し、過料に処すという極めて具体的な規定も含まれております。もっとも、同様のいわゆる迷惑行為に対しては、既存の条例でも、例えばぽい捨てについては空き缶等の散乱の防止に関する条例第15条で、また犬のふんの不始末については動物の愛護及び管理に関する条例第50条でそれぞれ罰金規定がございます。

今回の条例が既存の各条例を補完するとともに、さらに有機的に結びつける役割を担わせるため制定を目指すというのであれば、立法技術論としては理解できます。しかし、疑問も生じます。既存の条例を有効に結びつけるというのであれば、当然整合性を持たせなければなりません。既存の条例でぽい捨てやふんの不始末が罰金規定になっているのに対して、なぜ今回の条例案では禁煙地区内での喫煙が過料なのでしょうか。

ぽい捨てやふんの不始末についての罰金規定、これは市民の間で定着しているとは言いがたく、告発をしたという事例は聞いたことがなく、十分に機能しているとは到底思えないわけです。だから、今回の条例で禁煙地区内の喫煙については手続的に煩雑な罰金規定ではなく、いわゆる即効性、即時性のある過料なのでしょうか。であるとすれば、既存の条例も改正を目指し、過料に統一すべきではありませんか。これは不整合であると思いますが、いかがでしょうか。一体いかなる理念と考えに基づいて作成をされたのか、提出者として市長の基本的な考え方をお伺いをしたいと思います。
 

他都市の例も参考にしながら慎重に研究

【市の答弁】
安心・安全で快適なまちづくりなごや条例案は、地域の皆様とも議論を重ね、身近な課題について掲げたものでございまして、既に違法駐車の防止、あるいはごみのぽい捨ての禁止など、既存条例で取り組んできた課題も盛り込んでいるわけです。既存の条例は、それぞれの制定の際にそれぞれ経過があったわけで、議員御指摘の点を踏まえまして、他都市の例も参考にしながら慎重に研究してまいりたいと思っております。

また、今回の条例に掲げた課題は、ほとんどマナーやモラルにかかわるもので、市民一人一人が守っていただくことが基本となります。さらには、その取り組みを地域の問題として考えまして、市民、事業者、市が一緒になって協働して進めていくことが大切であると考えています。
 

犯罪防止専門の実働組織が本市にあるのか 
 路上禁煙地区 どういう基準で設定するのか

具体的な展開とあわせ、どう実効性を確保していくかについて、主なものに絞ってお尋ねいたします。

まず、第6条1項の犯罪の防止に規定された内容に異論を持つ人はないであろうと思います。しかし、できもしないことを並べ立てても、犯罪発生件数が減少するわけではありません。犯罪防止に関する専門の実働組織が本市にあるのでしょうか。実質的な行動人員はないと言っていいと思います。

当然、これは犯罪防止を担当する部署を、区役所なりに設置しなければ始まらないと考えますが、どうでしょうか。あわせて、条例案に言う犯罪防止のための取り組みとは、あるいは犯罪の防止に配慮したまちづくりの推進とは一体何なのか。具体的にいかように展開し、本市に課せられた責務を果たし、実効性を確保するおつもりか、市長の御見解を伺いたいと思います。

さらに、第8条についてであります。路上禁煙地区についてでありますが、私は昨今のいわゆる分煙意識の高まりの中、たばこを吸う人と吸わない人とが互いに快適に過ごす方策やルールを考えることは大変重要なことだと認識いたしております。路上禁煙地区の設定については、既に他の自治体でも試みられておりますが、人通りの多いいわゆる繁華街を想定しているのだろうと思いますが、基本的な考え方、一体どういった基準で設定しようと考えておられるのか、伺いたいと思います。

また、あわせて路上禁煙地区におけるたばこの販売や自販機についてどのように対処なさるのか。当然売り上げにも影響があろうかと思いますが、一方で、たばこ税による収入は貴重な財源であることも確かです。今後、繁華街における路上禁煙を実施するとして、すっきりとした考え方の整理が必要ではないでしょうか。そして、その上で12条に派生するわけですが、過料を徴収するのは一体だれで、どのようにして行うのか、その実効性の確保についてお答えをいただきたいと思います。
 

区役所に防犯の窓口機能を持たせる
 路上禁煙地区の指定は、市民公募委員等の意見を聞き協議

【市の答弁】
条例では、市や事業者は犯罪の防止に配慮したまちづくりの推進に努めることといたしておりまして、今後公共施設の整備にはこうした視点を取り入れたまちづくりに努めてまいりたいと考えております。また、犯罪防止のための住民パトロールの運動など、住民の方々の自主的な活動の支援や防犯情報の提供など、県警察とも連携しながら犯罪の防止に努めてまいりたいと考えております。また、議員御指摘のように、区役所に防犯を含めた安心・安全なまちづくりの窓口機能を持たせるような検討もしてまいりたいと思っております。

次に、路上喫煙によるやけどの危険、あるいは吸い殻等をぽい捨てすることによりまして、まちの美観を損ねるという市民の声を聞き、喫煙者の責務といたしまして道路等公共の場所での歩行中、あるいは自転車に乗っての喫煙はしないよう努めていただくことを規定したものでございます。また、歩行者が多い繁華街や乗降者が集中する駅周辺など、常に人込みの多い地域は周囲に対する危険や迷惑も著しいことや、あるいは歩きたばこだけではなくて、立ちどまっての喫煙も危険であることから、路上禁煙地区を指定するものでございます。

路上禁煙地区の指定に当たりましては、御指摘のようにさまざまな課題がございます。市民公募委員初め各種市民団体等の御意見をお聞きするとともに、路上禁煙地区の市民や事業者の方々に御説明させていただくなど、十分に協議をしてまいりたいと思っております。

禁煙地区内での喫煙に対する過料の徴収については、地方自治法では過料の徴収は私人に委託できないこととなっております。そこで、過料を徴収する場合には東京都千代田区の例にありますように、非常勤特別職であります嘱託員などの職員により徴収することを予定してます。
 

課題山積の条例案 問題は実効性

p-hatori-mangaこの条例、大変課題山積といった感じを改めて実感しております。ほとんどマナーであるとかモラルといったことにかかわる条文ばかりだと思います。安心・安全、快適なまちづくりというのであれば、例えば防災の視点でありますとか公共スペースの占有の問題など、ほかにも大事な課題はあるわけです。ただ、市民の要請として、この条例案の内容というのは大切なものばかりであると思っております。

このたびの条例案というのは、制定すれば名古屋市自ら、大変大きな課題を課すということになると思います。条例というのは単なる宣言文ではない、問題は実効性だと思います。

先ほど申しましたように、ぽい捨てとかふんの不始末に対する規定のように、この条例が制定を見たとして、何年か先に仮に死文化しておるとしたら、それは大変恥ずかしいことになると思うわけです。市民の協力が不可欠であることはもちろん、庁内の意識改革も含めて、先ほどの御発言のように市長のリーダーシップを期待したいというふうに思います。