2.代表質問 第3期松原市政を問う

平成17年6月議会

市民との協働、地域との連携

p-hatori-manga市民との協働、地域との連携が叫ばれています。大変重要な視点でありますが、市政と市民、地域を結ぶ極めて重要な役割を担うはずの区役所に、区役所全体の企画機能がありません。

まちづくり推進室が今年度設置され、安心・安全で快適なまちづくり(企画)担当の主幹が新設されましたが、実際には、安心・安全で快適なまちづくりなごや条例に関連する事務に係る限定的な企画であります。

これは、この先区役所全体の企画機能を付加するための調整段階であり、将来への布石と理解をすればよいのでしょうか。例えば、災害対策や児童虐待などといった命にかかわる重要テーマについて、それぞれの区における現状と課題を一番よく認識しているのは、市民に身近な区役所であるべきです。こうした新たな課題に対する窓口機能の充実とあわせて、区役所に、自身で考え行動する企画機能を持たせるべきだと思いますが、体制の見直しも含め、助役の御見解を伺いたいと思います。

◎助役 市民により身近な行政組織である区の機能や権限を、より一層充実強化することが必要であると強く認識いたしています。現在、庁内で検討組織を設け、今後の区のあり方について鋭意検討を進めているところです。そうした中で、平成17年度にはまちづくりの企画機能を明確にするため、まちづくり推進室に安全・安心で快適なまちづくりの企画担当を設置し、地域と連携した施策に取り組んだところです。

しかし一方、議員御指摘のように、社会環境の変化等により児童虐待問題のように現行の区役所組織で十分に対応し切れないさまざまな問題が生じてきていることも事実です。これら新たな課題に対して、まずは市民に最も身近な区役所が窓口として対応できるようにすることが重要である、そういう認識をいたしております。こうしたことから区役所の窓口機能を充実させ、時代に即応した市民ニーズにこたえられるような体制づくりを含め、区役所のあり方について、議員御指摘の点も踏まえながら早急に検討してまいりたいと考えております。
 

次世代の育成

4点目は、次世代の育成についてであります。

市長のマニフェストには子ども権利条例を制定するとうたわれております。本市がことし3月に策定した名古屋市次世代育成行動計画(なごや子ども・子育てわくわくプラン)でも、こども条例(仮称)の制定を掲げております。一体どのような内容を想定しておられるのでしょうか。既に制定済みの川崎市のように権利の保障に特化をしたものなのか、名古屋市独自のものを考えておられるのか、また、その制定時期についても市長にお答えをいただきたいと思います。

◎市長 本市が今年3月に策定した名古屋市次世代育成行動計画に、こども条例(仮称)を制定すると掲げているわけですが、この計画の基本的な視点として、子供の視点に立ち、子供の権利を守り、子供の最善の利益を追求し、子供たちを育てていくこととしております。また、名古屋のすべての市民が次代を担う子供の成長を願い、家庭だけでなくて地域・企業・行政が力を結集して、社会全体で子供や子育て家庭を温かく支えていけるようにという取り組みをしようとするわけでございます。これらの視点に立ち、こども条例を制定してまいりますが、その内容や制定の時期につきましては、今後広く市民や有識者などからさまざまな御意見を伺いまして、条例制定に向けた市民意識の醸成を図りながら検討してまいります。
 

医療費の助成

次に、医療費の助成の拡大についてであります。

さきに述べました次世代行動計画は、子供を生み育てやすい環境づくりを目指すものですが、今後この計画の着実な推進が必要です。子育て支援策はどれも重要です。それぞれの施策が互いに補完し合い、総合的な子育て支援につながっていくわけですが、それら施策の中でもとりわけ切実なものは、やはり経済的支援です。そのうち、子供の医療費の無料化については、現在ゼロ歳児から就学前までを対象としておりますが、計画には小学生医療費助成が新規実施とされております。また、市長も選挙期間中、小学校3年生までの入院・通院を助成すると言われてました。今後どのように実施していく予定か、市長のお考えを伺います。

◎市長 本年3月に策定した名古屋市次世代育成行動計画(なごや 子ども・子育てわくわくプラン)の中で、小学生の医療費助成はぜひとも実現したい重要な施策のうちの一つです。しかしながら、小学生医療費助成制度の創設につきましては、多額の経費増が見込まれます。一方、本市は第2次行財政改革計画を実行中の厳しい財政状況にございます。さらに、国の三位一体改革の行方もいまだ明らかでないという状況がございます。これらのことを考慮しながら、他の子育て施策との整合を図りながら、制度の実現に向けまして今後検討を進めてまいりたいと考えております。
 

待機児童の解消

続いて、待機児童の解消についてです。これも子育て支援策の重要な柱です。本市では毎年保育所の定員増に取り組んでいますが、地域によって保育所になかなか入れないという切実な声も聞きます。本市は、本年度を含む5年間を目途に解消すると本会議答弁もなされております。市長のマニフェストには実施時期についての記載はありませんが、市長任期は4年であります。いかがでしょうか。一刻も早い取り組みが必要であるとの認識から、あえて健康福祉局長に決意のほどを伺いたいと思います。

◎健康福祉局長 保育所入所待機児童の解消について、平成17年度は保育所入所定員264人の増を図ったところです。また、17年度予算に民間保育所2カ所の新設整備を計上しており、これにより平成18年4月には210名の定員増を予定しております。なお、現在集計中のことしの待機児童数は、前年の461人を下回る見込みでが、地域によってはなお相当数の待機児童がございます。

次世代育成行動計画には、待機児童の解消を図るため、保育所の定員増を800人とする目標を掲げたところです。この計画期間は5年間としておりますが、議員御指摘のように、子育て家庭の就労支援を図るためには、待機児童の解消は急務な課題であると考えており、できるだけ早期に解消が図れるよう努力をしてまいります。

深刻化する児童虐待問題

次に深刻化する児童虐待問題への取り組みについてであります。
平成12年に児童虐待防止法が施行されてより、本市における虐待死は政令都市の中で最悪の状況に陥っております。例えば、窓口・通報機能の明確化など、市民に一番身近な区役所の役割を明らかにし、区を中心とした地域ネットワークづくりが必要ではないかと思います。いかがお考えか、お答えをいただきたいと存じます。

また、児童虐待の早期発見には周辺住民の協力が不可欠です。改正児童虐待防止法では、虐待と思われるものについても通告が義務化をされました。市としてこうしたことを広く市民に伝え、周知し、市民との協働による取り組みを強化すべきであると思いますが、助役のお考えを伺います。

◎助役 ここ数年来、毎年悲しい児童虐待が名古屋市で起きており、喫緊の課題です。児童虐待への対応は、児童相談所だけでなく、社会福祉事務所や保健所、学校、幼稚園、保育園、さらには警察など関係機関との連携が極めて重要です。これまで区においては、こうした関係機関の代表者による区子どもサポート連絡会議を設置し、個別のケースごとに直接かかわっている担当者がサポートチームを編成し、具体的な対応を検討するなど、児童虐待への対応に努めてきました。

また、今年度から新たに区内の虐待ケースの対応状況を総合的に把握するケース検討会議を全区に設置したところです。今後、住民の皆さんにとって身近な窓口である区役所が児童相談所と役割を分担しながら、地域における連携の核となって機能していけるよう十分検討してまいります。

二つ目は、市民との協働の取り組みについてです。児童相談所が取り扱った児童虐待ケースは、平成16年度560件と、前年度の457件から大幅に増加しており、そのうちの約2割に当たる116件が近隣や知人からの通告によるものです。

他の家庭のことについて児童相談所に通告することは、プライバシーの問題もあり、ちゅうちょしがちですけれども、そうした一人一人の心がけが、子供の命を守ることにつながるということで、広く市民の皆さんに周知し、積極的な協力を呼びかけてまいりたいと考えております。特に支援が必要な家庭に対しては、身近なところでの見守りや声かけというようなことも大変大切であり、今後、主任児童委員を初めとした地域の皆さんの御協力も得ながら私ども努力してまいりたいと考えております。
 

学力向上プロジェクトチーム

次に、学力向上プロジェクトチームについてお伺いいたします。

これもマニフェストに掲げられておりますが、そもそも学力とは一体何を指すのか、教育の専門家である市長に単刀直入にお尋ねいたしたいと思います。そしてその上で、その学力について、名古屋の子供たちの現状をどのように認識しておられるのか、そしてさらに、市長は「名古屋ならではの教育」と言われましたが、その考えを学力向上プロジェクトチームにどのように展開なさるおつもりか伺いたいと思います。またあわせて、文部科学省の発展的学習を必須科目とする自治体もあるようでありますが、その基本認識もあわせて市長にお答えをいただきたいと思います。

◎市長 学力とは、座学によって習得する知識や技能と、さまざまな経験や体験の中で失敗したり成功したりしながら獲得する知恵、これを私は体験知という言葉を使っていますが、その座学で習得する知識や技能と体験知が相まって身につくものというふうに思っております。

名古屋の子供たちの学力の現状につきましては、教室での教科指導によって身につく知識や技能、こういったものは調査の結果おおむね良好というふうに聞いております。将来を担う子供たちにとりまして、体験知の方をより一層伸ばす必要があるのではないかと思っています。体験知と座学ですが、総合的に組み合わさってうまくいくわけでございますから、一方が一方的に劣っているというのが現状ではないかと今踏まえております。

それから、議員御指摘の発展的学習の取り扱いについてでございますが、私はこれは一律に課すべき、また指導すべきものではなく、学習がおくれている子には基礎・基本を確実に身につけさせ、それが身についた子供たちにはより高度な内容を学ばせていくものというふうに考えております。

一方、保護者や市民の中には、我が子にはより高度な内容を教えてほしいとか、教えてもらわなければ受験に取り残されるのではないかといった学力への期待や不安があることも承知しております。そこで、教育委員会におきまして、名古屋の子供たちに身につけさせたい学力、あるいは思考力、体験知の育て方、学ぶ意欲の向上策などにつきまして、教育関係者のみならず広範な方々に幅広く検討いただくために、学力向上プロジェクトチームを立ち上げる準備を進めているところです。

名古屋ならではの教育につきましては、例えば、環境をテーマにした万博で学んだ子供たちが、さらにCO2削減などの環境学習に取り組みまして、環境首都名古屋の担い手となるような特色のある教育を考えており、その実現に向けてこの学力向上プロジェクトチームで幅広い御議論をいただけるものと思います。

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